ReL150字

ReL150字 · 12日 4月 2024
 イルジアはここを出たら別の森へ行き店を再開させるそうだ。 「魔法使いでもたまに迷子になっちゃう人がいてね、私はその人に道標を授けているのよ」  イルジアの言葉に先を行くサレンアーデは人知れず眉を顰める。 「今は貴女に必要ね、解けない謎を抱えた本があるなら手伝ってあげる」
ReL150字 · 12日 11月 2023
「あれは幽霊じゃないの?」 「幽霊よ、記憶もまた今を置き去りにした抜け殻よ」 「セレイネイドは見つからないの?」 「彼はもういないわ。でも抜け殻はあなたの中にありそうね。そう視えるわ」 「どうすればいいの?」 「視て行けばいいんじゃない?繋がりを。触れれば形を取り戻すでしょう」
ReL150字 · 05日 11月 2023
「私はイルジア、ここは名無しの森。魔法使いじゃないと道を見出す事ができない迷いの磁場。 ルシェ、あなたはとても用意周到に造られているのね。まるで全部予測されていたみたいに。 あなた今は本当に誰でもないけど、でも記憶が見えるでしょ、千年前に砂漠だった頃の旅人を見たのだから」
ReL150字 · 16日 10月 2023
 サーカステントの中は赤と青のビロードに包まれた占いの空間だった。 「久しぶりね、ベルドウール。ん?サレンアーデだっけ?」 「変わりはないね……。お前に視てほしいやつがいてね」  占い師は入り口から様子を見るルシェに微笑んだ。 「私はイルジア。よろしくね、誰でもないあなた」
ReL150字 · 16日 10月 2023
 霧が出始めた頃、それは姿を現した。   森の中には似つかわしくない小さなサーカステントだった。 「サーカスのテントって意外に小さいんだね」  ルシェが不思議がる。 「サーカスじゃないけどね。観られるのは俺たちの方だろう。そういう意味じゃそうかもね」  また、ルシェにはよくわからなかった。
ReL150字 · 01日 10月 2023
「どっちに進むか分かる?」  二手に分かれる道にてサレンアーデはルシェに訊ねた。 「分かるわけないよ……」 「少しも?」 「どちらも同じに見えるよ……」 「ふうん。幽霊は見えるのにね……」  サレンアーデはわざとらしく首を傾げて右に進んだ。  ルシェにはその意図はよくわからなかった。
ReL150字 · 17日 9月 2023
 話の途中ルシェがふと立ち止まると、そこには旅人と思われる男がラクダを連れているのが見えた。しかし彼らは透けている。 「幽霊だろ?魔法使えれば普通に見えるものだけど」 「僕が使えるってこと?」  驚くルシェをよそにサレンアーデはその幽霊の場違いさにほんの束の間疑いの目を向けていた。
ReL150字 · 10日 9月 2023
 サレンアーデの知人の名前はイルジアという。この森のどこかに住んでいるらしい。  場所はわかると言うが彼の足の進みに迷いが見られた。 「どんな人なの?」 「魔女だよ。気まぐれな青い鴉みたいな……」 「もしかして、会いたくないの?」 「気まぐれに幸福を授けるとかゾッとするだろ」 「え?」
ReL150字 · 08日 7月 2023
「あいつ、消えたくてそうしたわけ?」 「多分ね……。ルカはセイリオの思い出なんだ。その似姿、別人になれば消えると考えたのかも」  サレンアーデはルシェから日記を受け取り開く。  その頁に彼の知人の名があった。 「お前の事を詳しく調べたほうがいいかもね」  ルシェを調べる手掛かりだった。
ReL150字 · 23日 6月 2023
「セイリオの、みんなはシリン、それからセンクラッド博士と呼ぶよ。あの人の日記に書いてあったんだ」 ルシェはまずシリンについて話した。 自分の造り主である事、苑国の責任者である事、セレイネイドの唯一の友人であった事、シリンは完全な死を目指すセレイネイドの手助けをしたのだと。

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