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天秤の右皿と蝋燭

左皿を探していた天秤の右皿は、左皿が落ちていった巣穴を見つけた。
長いこと待っていたが左皿は出てこない。
巣穴が使えなくなれば左皿が出てくるだろう。
そう考えていたところに青薔薇が風に吹かれて飛んでくる。

青薔薇は出会った右皿に自分が手折られた怒りと悲しみを話した。
右皿は巣穴の中を見てからこう言った。
あの蝋燭に頼んでみたら全てを燃やしてくれるかもね。
それは出鱈目だったが、信じた青薔薇は巣穴に落ちた。
それからしばらくして、巣は燃え、その燃え残りに蝋燭があった。

それは変わり果てた天秤の左皿だった。
天秤を元に戻そうと思っていた右皿だったが、それはもう2度と叶わない事を知ってしまう。そして、もう自分はとっくに壊れて天秤ではなくなってしまったことも知った。

蝋燭は自分が左皿だった事を覚えていなかった。

 長い長い夜が明けて、蝋燭も灯すべき闇がなくなってしまった事を知る。
左皿も蝋燭も、役割がなくなってしまった。

でもそこにまだ存在していた。