銀色の狼の暗い巣に、
青い薔薇が一輪風に乗って迷い込んだ。
魔女によって作られた青薔薇は魔女によって手折られ、それを怒っていた。
狼と蝋燭はその話をじっと聴いていた。
青薔薇は蝋燭に、
あなたの炎で全てを燃やしてほしいと頼むけど、
蝋燭は動けないからできないと断った。
青薔薇は狼と蝋燭がなぜここにいるのか知らなかった。
青薔薇は本当は世界の全てを燃やしたかったが、蝋燭の映し出す狼の思い出をみてそれをやめた。
あまりにも美しく、悲しかったから。
狼は蝋燭を外に出してやりたかった。
蝋燭は狼を外に出してやりたかった。
青薔薇は力になりたくなった。
青薔薇は自らを火種にして、出口までの道標になろうとした。
そうすれば二人とも外に出られると思ったからだ。
けれどそれは巣を燃やしてしまい、狼と青薔薇は燃えてなくなり、蝋燭だけ助かった。
蝋燭は天秤の左皿で作られていたから燃えずに済んだのだった。
残された蝋燭は巣の外でずっと待っていた天秤の右皿に出会うのだった。